











「ワーキングマザーと小学校受験 1」では、小学校受験の本質、をお伝えしました。この「2」では、考査の内容について触れ、ワーキングマザーの家庭では「見落としがちなこと」を知っていただきたいと思います。
小学校受験の考査の内容には、大別すると2つになります。
1.「学習的要素」
ほとんどの方がイメージするようなドリル的問題で、数や量の理解、図形や絵の構成力、さまざまなものを推理する力などがこれに当たります。これは、子ども達が、教えられることによって学習していく要素、ですね。
2.「常識的要素」
言語、季節、常識に関する問題で、これらは「教えられて、学ぶ」というものではなく、本来は普段の家庭生活、日常生活の中で自然に理解したり、習慣の中で身に付いたり、大人や両親を見ることによって習得していく知恵や知識、です。
経験上、私が感じていることは、ワーキングマザーのご家庭では、この2番の「常識的要素」のほうに、問題がある場合が多いようです。それは、子どもがどうしても母親と接している時間が短い、とか、家庭で自然に家事を体感している時間が少ない、ということが原因です。
これに関しては、急にどうすることもできない要素でもあるわけですから、よけいに、この「欠けている点」を認識し、意識してその部分を育てるようにする必要があります。
「今さらそんなことを言われたって、仕事を辞めることも出来ないし、辞める気もないもの。仕方ないじゃない!」と、開き直ってしまうと、子どもが未習得のままでいってしまうのです。もちろん、小学校受験というものがなければ、こういうことは後々、自然に会得していくものですから、「今慌てて」する必要のないことです。
しかし、「受験をする」と決めた限りは、親の妙な意地で、見落としやし残しがあっては子どもがかわいそうです。
「何が十分で、何が足りないのか?」をきちんと理解し、上手に準備をしていきましょう。
これは、「個別テスト」の例題です。
個別テストとは、試験官の先生と受験者が1対1で向き合い、時には絵やパズルなどをつかって、口頭で試験をするものです。
1枚の絵があります。
その絵には、お母さん(と思しき人)が描かれています。
その人は、庭用と思われるスリッパを片方だけ履いていて、もう片一方のスリッパは、絵の奥に裏返しになった状態で描かれています。
お母さんの目の前には、物干し竿に干されたシャツや靴下などの洗濯物。
いかにも、ぽつぽつと降り出したように見える雨が描かれています。
試験官は子どもにたずねます。
「この絵は、どういう絵だと思いますか?」
「もしこの絵があなたのお母さんだったら、お母さんは何と言うかしら?教えてください。」
この絵は、急に降り出した雨に気づいたお母さんが、びっくりし、慌ててお庭に飛び出して、洗濯物が濡れてしまわないように、干しているシャツや靴下を取り入れる・・・という絵でしょう。首都圏ではマンション生活をしている家庭が多いわけですから、多くの子どもは、「むー、うちは庭ではなくて、ベランダだなあ・・・」と思うかもしれませんが、それでも、日頃から、このような「洗濯、干す、取りこむ、取り入れる」という様子を目にしている(時には、洗濯物を干したり、取り入れたりするお手伝いをしている子どももいるでしょう)子ども達には、それほど難しい条件の絵ではない、と思います。
多くの子ども達は、「急に雨が降ってきたから、お母様が慌てて、干してあるお洗濯物を片づけようと出てきました。」と答えます。そして、お母さんのセリフに関しては・・・
子ども 1: 「もう、やだわー。お洗濯が濡れちゃう!」
子ども 2: 「あら、雨だわ。朝の天気予報では、一日中晴れって言ってたのに・・・.」
子ども 3: 「お洗濯ものが濡れちゃう!おっとっと、スリッパ、スリッパ。まっ、いいわ!」
上の3つの答えは、じつは私の教室の年中児が実際に答えてくれた「ママの言葉」です。
子ども達の答えは、とても楽しいもので、日頃、お母様がこういう状況に遭遇した時、きっと思わずそんな独り言を言いながら、お洗濯物を取り込んでいらっしゃるのだろうなあ、とついつい想像し、笑えます。
しかし、ワーキングマザーの家庭の子ども達は、ちょっと自信なさそうに「お洗濯が濡れないように・・・です。」と答えてくれます。さすがに、年中児の年齢になると、この絵の意味しているものがさっぱりわからない・・・ということはありません。
しかし、「お母さんはこの時、何と言っていると思いますか?」という質問には、なかなかリアルなセリフは戻ってはこないのです。
仕方がないですね。カリキュラムの中ではなく、緊張感を解いた状態で、この子ども達にあらためてたずねてみると・・・
「何ていうかなあ・・・わかんない。だってー、うちは洗濯は外には干さないもん!乾燥機、乾燥機!」
「ママはね、夜寝るときにお洗濯をして、お風呂乾燥するんだよ。朝、ママは和室に乾いたお洗濯物を積んでいくの。帰ってきたら畳むんだよ。」
「外に干したら大変でしょう?会社に行ってる間に、雨降ったら濡れちゃうもん!」
確かにそうですね。今では、お仕事をしている、していない関係なく、お洗濯は外には干さず、乾燥機やお風呂乾燥を利用するご家庭も多いのが現状でしょう。
しかし・・・です。試験官や学校を相手に、この絵は時代錯誤です!と憤るわけにはいきません。そして、これは、あくまで「ワーキングマザーの家庭」が遭遇するかもしれない「落とし穴」であることを、是非、理解していただくために上げた例です。
そういうこともあるなあ・・・と、素直に理解してください。
もう一つの例です。
試験官:「お台所から、カタカタカタって音が聞こえて来ました。シューシューシューとい小さな音も聞こえます。いったい何の音だと思いますか?」
これは「言語」と「表現」というカリキュラムの一つです。この問題に関しても、私は年中児のクラスで出題してみました。
子ども 1:「カタカタカタはおばけかな?」
子ども 2:「ちがうよ!ぼく、知っている!きっとおなべのフタの音だよ。」
子ども 3:「あ、わたしも知ってる!うちで『おでん』した時に鳴ってた!」
子ども 4:「シチューも鳴るよ!カレーも鳴ってたよ!」
子ども 3:「この間、パパがお休みの時、おでん作ってくれたの。おでんの大きなお鍋がこんなふうに鳴ってたよ。そしたね、お買い物から帰ってきたママがパパに言ったの!おでんはパパ、こんなに強い火にしちゃダメ、だって。」
子ども 1:「ぼく、おでん、大好き!シチューも好きだよ!」
子ども 1:「シューシューはねえ、きっと、おやかん!」
子ども 2:「おやかん、って何?」
子ども 1:「お湯、お湯だよ!シューシューッて音なって、煙が出るの!」
子ども 3:「煙じゃないよ、湯気っていうんだよ!」
子ども 2:「ラーメンでも出てるやつ?」
子ども 3:「そう!熱いものだと出るやつ!」
子ども達の話は尽きません。
この例でも、こんなふうに答えてくれた年中児達は、たぶんおなべの中のものが沸騰したら、こんなふうになるのだ、お湯がわくと、やかんから湯気が出るんだ、という事を「教えてもらった」のではなく、普段の生活上の経験から、「生きた理解」をしていたのだと思いました。だからこそ、話しが尽きず、いろんな話しに派生し、とても楽しそうでした。
何てことなく話しているように思ってしまうことですが、実際には、子ども達が普段の生活の中で気づき、不思議に思ったり、疑問に思ったりして、時には教えてもらい、時には自分の感性でいろいろと感じ、考えていることの披露、なんですね。
「ワーキングマザーの小学校受験 1」でも描きましたが、「不利」である、ということは本当に少ないものです。しかし、是非、私がお勧めしたいことは・・・
『もし私が仕事を持っていなければ、私はわが子にどんなふうに接していただろう?』
『もし私が働いていなければ、私とこの子は毎日、どんな生活をしていただろう?』
こういうことを考える時間を作る、ということです。
そして、もし、こういう部分は不足しているかもしれない、とか、本当はこんなふうにしてあげたいって思っているのよね、と思われれば、その部分は、是非、ご自分の努力で補ってあげてください。それが、ワーキングマザーの責任であり義務、です。
小学校受験の準備期間は、その渦中にいる時にはとてつもなく長く感じても、振り返ってみれば、それほど長いものではありません。
ですから、本来、週末の休日は、仕事を離れて心身を休める貴重な時間かもしれませんが、どうぞそのお休みの日を利用して、不足しているかもしれないこと、できればしてあげたいと思っていることをしてあげましょう。
それを面倒だなあ、イヤだなあ、と思ってするのではなく、そこに「ママの愛情」が伴えば、きっとご自分にとっても楽しい時間、新しい楽しみの一つとなることでしょう。
ワーキングマザー、働くお母様は、とても素敵な、立派な社会人です。
お母様が一生懸命に仕事に打ち込む姿は、たとえ子どもは見ていなくても、子ども達にとっては誇りに思っていることなのです。仕事も家庭も中途半端、こんな悲しく、つまらない事はありません。
正しい知識を持ち、真っ当な姿勢で小学校受験に取り組むことは、とても有意義なことですよ。きっと、母親としてのご自身の意外な面に気づいたり、わが子の知らなかった姿などを知る・・など、「新しい親子の発見の期間」となるはずです。