親の母校とわが子の受験

親の母校とわが子の受験

・ 母校を愛する心

 私は大阪にある、幼稚園から大学まである一貫校の卒業生です。
その学校の水が非常にあった私は、在学していた当時から、将来、子どもを授かれば、是非、我が子も、この学校で学ばせたい!そう思っていました。
 「私が大好きなこの伝統ある制服を着せたい!私がそうしたように、スポーツデイでは溌溂と戦い、コーラスコンクールでは友とのハーモニーに心震わせ、始業式や終業式では、ひんやりとした空気に満ちた古い講堂の中、座り心地の悪い木製の長椅子に座り、静かな気持ちで学院歌を歌って欲しい!」
 この文章は、大学を卒業した私が、母校から依頼を受けた学校の季刊紙に書いた文章の一部です。まさにそれは当時の私の願い、私の夢でした。

 でも・・・私は結婚し関西を離れ、幸運にも娘は授かりましたが、大阪から500キロという横浜在住では、私の母校への思いは叶わぬ夢に終わりました。それでも、帰省した折、町や電車で母校の制服姿の女子生徒を見ると、胸がキュンとするものです。
 しかし、最近私は「母校への思い」が、決してわが子と重ねる事のできない「叶わぬ夢」であった事が、じつは、私にとっても、そして何より娘にとっても、とても幸せな事だったのかもしれない・・・と感じるようになりました。


  私立校とは、他項目でも繰り返し書いている通り、子どもが育つひとつの大きな「環境」です。もし小学校が、たんに「学業を修める場」であるとすれば、わざわざ学校という場に行かなくても、自宅でわが子に合った家庭教師と自学する・・・これでも問題はないはずです。例としては極端かもしれませんが、事実だと思われませんか?

 しかし学校とは、「学業」を越えた、子どもが一個の人として成長をしていく上で、大きな影響をうける世界です。人的な影響、つまり、友人や教師との関わりという意味だけではなく、子ども達は多くの卒業生の思いをも含めた、目に見えない「学校の気」の中で、毎日育っていきます。
 当然の事として、そこで育った者にとれば、そのようにして「自分の育った世界」への思いが強く残ります。そして、そういう強い思いは、卒業してから時間が流れれば流れるほど、甘美なもの、一つの郷愁のような感情がプラスされ、「わが子も、母校で学ばせたい!」という思いは熟成されていくのです。

 たいていの場合、社会でそれなりに経験を積み、自分を育ててくれた教育環境への感謝の思いや誇りを、あらためて実感するような時期に、わが子の受験、がやってきます。
 このようにして、私学のご卒業生である多くのお父様、お母様は、ご自分の母校を、迷わずわが子の志望校にしていかれます。

 こういう、母校への強い思いを承知の上で・・・やはり敢えて申しあげます。
 どうぞ、ご自分の母校は「僕の母校、私の母校」としてすばらしい思い出の中に存在させ、まずは気持ちをリセットして、親として白紙の状態から「わが子の学校選び」を考えてみませんか?
 まずは母校ありき、ではなく、自分の母校は母校として大切にとっておき、そこは、最初から、「よくわかっている、理解できている学校」として横に置いて考えてみる・・・それが、わが子にとって、最も真っ当な親としての考え方だと思います。

・ 親は親、子どもは子ども

 もし親が「まず母校ありき」として考えてしまうと、その学校は「パパの母校」「ママの母校」であるはずなのに、知らず知らずのうちに、親の強い母校への思いが見えない力となってわが子の意識をコントロールし、「ここはぼく(わたし)も行く学校なんだよね」「きっとパパ(ママ)はぼく(わたし)にもこの学校に行って欲しいって思ってんだよね!」というふうに、静かに、でも強く感じていきます。
  たとえ、親がそういう事を口に出さなくても、です。(実際には、多くの親は、毎日のようにわが子に自分の母校がいかに素晴らしいかを熱く語り、うるうるした目で、わが子の制服姿を思い描いてしまうのです・・・)  

  私事で恐縮ですが、主人は早稲田大学の出身です。様々なスポーツでも活躍する早稲田大学ですから、息子と娘は幼い頃から、テレビの前で父親が連呼する「早稲田がんばれ!早稲田がんばれ!」の声のなかで育ちました。
  ピクニック気分で、よく六大学野球の早慶戦にも出かけました。そんな我が家の子ども達は、幼稚園の頃は、「慶応」と聞けば「パパの敵の学校だね!」と真面目な顔でよく言ったものです。そしていまだに、慶応の生徒や学生に、多少の違和感?があったりするねえ、と言って笑います。
  この例でもおわかりの通り、無垢な子どもは、ストレートに、五感で「親からの強いテレパシー」を感じます。そういうことを十分に理解し、出来る限り「白紙」の気持ちで我が子の小学校受験に臨みましょう。

  合否という面から考えても。 子どもが受験をする時、親(ご両親)がその学校の出身であることがかなり大きなアドバンテージになる、というのであれば、きっと、どの学校も1学年のうちの1クラス程度は、卒業生の子弟で埋まってしまうでしょうし、受験者の中には、すでに上の兄弟や姉妹がその学校に在学している、という場合もあるわけで、すでにその学校に縁がある、という人は、かなりの人数いる、というのが現実なのです。
  この状況のもと、受験はやってきます。 母校=わが子の進学先、と信じて疑わない・・・こういう短絡的な考え方では、受験結果が思い通りでなかった場合、親子ともにとても不幸になります。
  子ども、家庭と学校は、天命とも言うべき縁によって結ばれていきます。両手を広げてわが子を、ご家庭を迎えてくださる学校こそが、進学して幸せになる学校なのです。
  親の母校は、あくまで「親の母校」です。そのことを、しっかりと肝に銘じること。それが、わが子をピュアに見つめ、導いてあげることだということを忘れないように。

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